
日本の鉱山には、まだ知られていない鉱物の物語が眠っているかもしれません。
群馬県桐生市にある、かつてマンガンを採掘していた筑原鉱山。すでに閉山したこの鉱山から、2022年、2種類の新鉱物が報告されました。
その名は「群馬石(Gunmaite)」と「桐生石(Kiryuite)」。
ひとつの鉱山から、地元の名前を冠した新しい鉱物が2種類も見つかったのです。

スタッフ
見つかる時って一気に見つかるものですね👀✨️
新鉱物って、どんなもの?
新鉱物とは、これまで知られていなかった、独自の化学組成や結晶構造を持つ鉱物として認められたものです。
見た目が珍しいだけでは、新鉱物にはなりません。成分や結晶の構造などを詳しく調べ、科学的な審査を経て、正式に認められる必要があります。
今回の2つの鉱物は、どちらも2022年に国際鉱物学連合(IMA)によって承認され、2023年に学術誌で詳しく報告されました。
群馬石は群馬県から、桐生石は桐生市から。 それぞれの名前には、発見された土地へのつながりが込められています。
| 鉱物名 | 理想化学式 | 主な構成元素・特徴 |
|---|---|---|
| 群馬石(Gunmaite) | (Na₂Sr)Sr₂Al₁₀(PO₄)₄F₁₄(OH)₁₂ | ナトリウム、ストロンチウム、アルミニウム、リン、フッ素などを含む、複雑な組成のリン酸塩鉱物。 |
| 桐生石(Kiryuite) | NaMnAl(PO₄)F₃ | ナトリウム、マンガン、アルミニウム、リン、フッ素を含むリン酸塩鉱物。 |
岩石の中で起きた、特別な変化
では、なぜ筑原鉱山から、このような珍しい鉱物が見つかったのでしょうか。
その背景には、「熱水変質」と呼ばれる現象が関係しています。
熱水変質とは、地下を流れる温かい水が岩石の隙間に入り込み、もともとあった鉱物を変化させていくこと。水に溶け込んだ成分が反応することで、新しい鉱物が生まれることもあります。
まるで、地球の内部で長い時間をかけて行われる、小さな化学実験のようですね🔬
筑原鉱山では、こうした環境の中で、さまざまな成分が組み合わさり、群馬石や桐生石が生まれたと考えられています。
群馬石は、六角形の板のような形をした結晶として見つかりました。肉眼で見たときの美しさだけでなく、結晶の形や内部の構造を調べることが、新しい鉱物の発見につながります。
名前に残る、群馬と桐生の鉱物の記憶
群馬県には、珍しい鉱物が見つかる産地がいくつもあります。マンガンを含む鉱物で知られる地域もあり、鉱物好きにとって興味深い土地のひとつです。
今回の筑原鉱山は、そうした産地のひとつでありながら、群馬石と桐生石という2種類の新鉱物によって、あらためて注目されることになりました。
興味深いのは、鉱山が閉山したあとも、研究によって新しい発見が生まれていることです。
鉱山の仕事が終わっても、そこに残された岩石が持つ情報までなくなるわけではありません。詳しく調べることで、それまで気づかれていなかった鉱物の存在が明らかになることがあります。
地元の名前がついた2つの鉱物は、その土地の地下に、まだ知られていない自然の営みが残されていることを教えてくれます。

スタッフ
群馬、アツいですね🔥
以前、群馬県から新しい鉱物が発見されたという記事を紹介しましたね!
群馬・茂倉沢鉱山から発見!4つの新鉱物

スタッフ
同じ鉱山から、2種類の新鉱物が見つかるなんて面白いですよね。群馬石と桐生石、どちらも地元の名前がついているところも素敵です。閉山した鉱山から、何年もたって新しい発見が生まれる。鉱物の世界には、まだまだ知らない物語がありそうですね!
参考:Nishio-Hamane et al. (2023) Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.118、Mindat.org



