トパーズ
鉱物種名:トパーズ
化学組成:Al2SiO4(F,OH)2
結 晶 系:直方晶系
シェリーピンクのトパーズ
岐阜県中津川市蛭川田原産、長さ2.5cm
トパーズは、酒黄色、ピンク、ブルーなど多彩で、人気のある宝石です。主要産出国はブラジルやパキスタンですが、古くは日本も代表的産地でした。明治時代に岐阜や滋賀で美結晶が多産することが広く知られるようになり、欧米の博物館で展示されました。国内産地は、岐阜県の「苗木地方」と滋賀県大津市の「田上地方」が双璧。ここでは苗木地方のトパーズを紹介します(図1)。
花崗岩の産地「苗木地方」
鉱物産地として名高い「苗木地方」は、岐阜県中津川市の通称苗木地区を中心に、「苗木花崗岩」の分布する地域一帯を指します。花崗岩は地下でマグマが固まってできた岩石で、花崗岩中の空洞(晶洞)には水晶やトパーズなどの結晶が産することがあります。蛭川田原地区には石材用途の花崗岩採石場が点在し、1990年代まで操業していたために、見事な鉱物標本が副産物として得られました(図2,図3)。
花崗岩中に産する結晶は短柱状で、錐面(結晶の頭の斜めの面)のうち2つの面が大きく発達し、家の屋根のような形態になる傾向がみられます(図1,図4)。主成分はアルミニウムとケイ酸で、フッ素が含まれることが特徴的。
光による色あせに注意!
トパーズは光に対してデリケート。日光や紫外線にさらされると、魅力的な色が程なく失われます。特に酒黄色や橙、ピンクのものは要注意。苗木産の結晶ではピンク系のものは容易に色あせて淡青色や無色に変わります。放射線照射処理された濃青色のものは耐光性を持ちます。
石橋 隆
一般社団法人地球科学社会教育機構 理事長。
1977年長野県松本市生まれ。
京都にある石の博物館、益富地学会館の理事・主任研究員や大阪大学総合学術博物館の研究員を経て、2024年より現職。地球科学の普及や研究家への支援活動に従事するほか、鉱物や地質の研究を行う。
著書に『プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』(ナツメ社)、監修に『世界を魅了する美しい宝石図鑑』(創元社)などがある。
石橋先生の書籍情報
- 『宝石図鑑』キャリー・ホール著, 石橋隆監修(創元社,2023年)
- 『日本の国石「ひすい」―バラエティーに富んだ鉱物の国』日本鉱物科学会, 石橋隆分担執筆(成山堂書店,2019年)
- 『鉱物 ―石への探究がもたらす文明と文化の発展―』石橋隆は監修と執筆(大阪大学出版会,2019)
- 『史上最強カラー図解 プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』下林典正・石橋隆監修