
イギリス王室の宝物庫に、「ブラック・プリンスのルビー(黒太子のルビー)」と呼ばれる、息をのむほど美しい赤い宝石があります。
14世紀にイギリスの皇太子に贈られてから、なんと600年以上もの間、代々の王室で「至高の宝」として大切に受け継がれてきたそうです。あのエリザベス女王の戴冠式(たいかんしき)で使われた、いちばん輝かしい王冠のセンターを飾っていたのも、実はこの石なのだといいます。

これほどの名作ですから、当時は誰もが本物のルビーだと信じて疑わなかったようです。 しかし、現代の科学で鑑別したところ、驚くべき事実が明らかになりました。
この石はルビーではなく、「スピネル」という別の鉱物だったのです。

スタッフ
そんなことある!?🙀

そもそも「スピネル」ってどんな石?

スピネルは、マグネシウムとアルミニウムからできた鉱物です。 実はカラーバリエーションがとっても豊富で、王道の赤をはじめ、大人可愛いピンク、神秘的なブルーやラベンダー、クールなブラックまで、思わず集めたくなってしまうような色が揃っています。

スタッフ
様々な色があてかわいいですね💎
スピネルって名前からも、かわいいイメージがあるなあ🤔
特に「赤いスピネル」は、輝きも色合いもルビーにそっくりです。 科学的な分析技術がなかった19世紀より前は、「赤くてキラキラ光る美しい石は、ぜんぶルビー!」と一括りに呼ばれていたため、当時の王族や宝石商たちも、純粋にその美しさを称えてルビーと呼んでいたようです。

スタッフ
赤い石は全部「カーバンクル!」ともいわれていましたね!🤔

もうひとつ、英国王室が所蔵する「ティムール・ルビー*」という有名な石も、のちにスピネルだと判明したといいます。石の表面には歴代の持ち主であるムガル帝国の皇帝たちの名前が刻まれており、彼らがこの石を「最高のルビー」としてどれほど深く愛してきたかが伝わってきます。
「ルビーの影」に隠れてしまった時代
その後、科学が進歩してルビーと明確に区別できるようになると、スピネルにはちょっぴり切ない時代が訪れます。
あまりにもルビーに似ていたがゆえに、「ルビーの代用品」という地味な扱いをされるようになってしまったのです。お値段もルビーよりずっと安価になり、宝石専門店の主役になることは滅多にありませんでした。「スピネルをください」と指名買いする客層も限られ、その真の価値が見過ごされる時代が長く続いたようです。

スタッフ
あららら、まるで偽物扱い・・・🤔
2016年、ついに訪れた「主役」への転換点
そんなスピネルの運命が大きく変わったのが、2016年のことでした。 アメリカの宝石協会が、スピネルを新たな「8月の誕生石」に仲間入りさせたのです。それまでのペリドットなどに加え、新しい選択肢として一躍スポットライトを浴びることになりました。
これをきっかけに、世界中のジュエリーファンがスピネル自体のポテンシャルの高さに気づき始めたといわれています。
- ミャンマー産のパキッとした鮮やかな赤
- タジキスタン産の吸い込まれそうなコバルトブルー
- タンザニア産のフェミニンなラベンダー
「産地ごとにこんなに表情が違って魅力的!」と話題になり、今ではハイジュエリーブランドもこぞって新作の主役に採用しているらしいです。さらに、「ルビー級に美しいのに、ルビーの何分の一かのお値段で手に入る高コスパな石」という評判も広まり、おしゃれな「石沼」の住人たちから熱い視線を浴びています。

スタッフ
やっと世間が気づいてくれたんですね😭
「正体がバレた」んじゃない。本当の価値で呼ばれるようになっただけ
スピネルがルビーではないのは事実です。でも、だからといってルビーより劣っているわけでは決してありません。
何百年もの間、世界最高峰の王冠のセンターで輝き、歴史を動かした皇帝たちが「最高の宝石」と称えたその美しさは、名前がどう変わろうとも1ミリも色褪せていないからです。
「偽物だとバレてしまった」のではありません。「あまりの美しさに誰もがルビーと信じた石が、長い時を経て、ようやく自分の名前で正しく愛されるようになった」。スピネルは、そんな優しくもドラマチックな歴史を持つ、いま大注目の宝石です。
また、スピネルは今後数年で、市場での取引価格がさらに上がっていく可能性が高いともいわれています。
その背景にあるのが、採掘に関わる人々の労働環境や権利を守る「フェアトレード(公正な取引)」の動きです。今後はルールを守っていない国からの輸出入が制限される可能性があるため、石自体の希少性がさらに高まり、価値が上がっていくのではないかと注目されているようです。

スタッフ
センター張れて色褪せない、最高のアイドルじゃないですか!👏
価値が上がるかもしれない!?それは要チェックですね✍



