ヒスイ(ジェダイト)

鉱物種名:ヒスイ輝石
化学組成:NaAlSi2O6
結 晶 系:単斜晶系

図1:ヒスイカボション
新潟県糸魚川市産、上下約1.5cm

ヒスイ(翡翠)は東洋人にはなじみ深い宝石です(図1)。日本では古くは縄文時代の遺跡よりヒスイ製品が出土しています。ヒスイの色は大半は白で、まれに緑、紫、青などがありますが、特に鮮やかな緑のものが人々を魅了したようで、我が国の古代のヒスイ製品には緑色の石が使われています(図2、図3)。中国では清の時代に精巧なヒスイ工芸品がつくられています。世界的な産出国は日本のほかミャンマー、グアテマラなどで、中国清朝のヒスイ製品はミャンマー産です。日本では宝石質のヒスイは新潟県糸魚川地域に産します。今回は糸魚川市小滝川の緑色ヒスイを紹介します。

図2:光をよく透すヒスイ原石
糸魚川産、左右7cm
図3:白と緑のヒスイ
糸魚川産、左右12㎝

小滝のヒスイ峡

図4:小滝川ヒスイ峡
左下の白色の巨岩がヒスイ。背後は明星山の絶壁。
図5:小滝川ヒスイ峡の白色のヒスイ巨岩

新潟県糸魚川地域は世界的なヒスイ産地です。この地域を流れる青海川と、姫川の支流である小滝川上流にはヒスイの巨岩がみられ、「ヒスイ峡」と呼ばれています。小滝川は1939年に確認された日本最初のヒスイ産地で、現在は「小滝川硬玉産地」として国指定の天然記念物になっています(図4、図5)。

ヒスイ峡より流されたヒスイはやがて海に至り、海岸でも波に打ち上げられたヒスイを見つけることができます。

2種類のヒスイ、ジェダイトとネフライト

古来ヒスイと呼ばれてきた宝石には、ジェダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)の2種類あることが近代になって明らかになりました。ジェダイトは輝石族の鉱物で主にヒスイ輝石からなり、ネフライトは角閃石族の鉱物からなります。

石橋 隆

一般社団法人地球科学社会教育機構 理事長。
1977年長野県松本市生まれ。
京都にある石の博物館、益富地学会館の理事・主任研究員や大阪大学総合学術博物館の研究員を経て、2024年より現職。地球科学の普及や研究家への支援活動に従事するほか、鉱物や地質の研究を行う。
著書に『プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』(ナツメ社)、監修に『世界を魅了する美しい宝石図鑑』(創元社)などがある。

石橋先生の書籍情報

  • 『宝石図鑑』キャリー・ホール著, 石橋隆監修(創元社,2023年)
  • 『日本の国石「ひすい」―バラエティーに富んだ鉱物の国』日本鉱物科学会, 石橋隆分担執筆(成山堂書店,2019年)
  • 『鉱物 ―石への探究がもたらす文明と文化の発展―』石橋隆は監修と執筆(大阪大学出版会,2019)
  • 『史上最強カラー図解 プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』下林典正・石橋隆監修