サファイア

鉱物種名:コランダム
化学組成:Al2O3
結 晶 系:三方

青い宝石といえば、まず頭に浮かぶのが「サファイア」。主な産出国は、インドやパキスタン、スリランカなど。「サファイア」は宝石名であり、鉱物の種名は「コランダム」です。日本でもコランダムは産しますが、サファイアと呼びたくなるような鮮やかな結晶の産地はわずか。その中で、指折りの美結晶が岐阜県の薬研山(やげんやま)に産します。

図1:サファイア
岐阜県薬研山産、六角形板状の結晶で
径約3㎜、厚さ1㎜

薬研山のサファイア

光を透すと鮮やかな青が浮き上がる六角形の結晶(図1)。薬研山産です。この山は岐阜県東部の中津川市にあり(図2)、地下でマグマが固まってできた花崗岩(かこうがん)がみられます。中腹には昔、鉄雲母という鉱物を採掘した跡があり、サファイアは鉄雲母に伴って産しました(図3)。結晶は最大1.5cmに達します。明治時代にはすでに産出が知られ、立派な標本が現存しています。

図2:薬研山(標高550m)
図3:母岩付きのサファイア 薬研山産

川底からみつかる!

母岩の風化によってはずれた結晶が水に流されて運ばれ、川底にたまることがあります(図4)。サファイアは珍しく滅多にありませんが、トパーズやキャシテライト(鉱物名:錫石)も川底にたまりやすい鉱物で、多く産します。木積沢川(きちみざわがわ)ではスズの鉱石として錫石を採掘していましたが、一緒にサファイアも産しました(図5)。これらの鉱物は川底をさらって、ふるい掛けや皿状の道具を使って水流で洗い出す方法で探します。

図4:川で見つかったサファイア
岐阜県中津川市山ノ田川産、大きな結晶が約6mm
図5:木積沢川での鉱物採取の風景

石橋 隆

一般社団法人地球科学社会教育機構 理事長。
1977年長野県松本市生まれ。
京都にある石の博物館、益富地学会館の理事・主任研究員や大阪大学総合学術博物館の研究員を経て、2024年より現職。地球科学の普及や研究家への支援活動に従事するほか、鉱物や地質の研究を行う。
著書に『プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』(ナツメ社)、監修に『世界を魅了する美しい宝石図鑑』(創元社)などがある。

石橋先生の書籍情報

  • 『宝石図鑑』キャリー・ホール著, 石橋隆監修(創元社,2023年)
  • 『日本の国石「ひすい」―バラエティーに富んだ鉱物の国』日本鉱物科学会, 石橋隆分担執筆(成山堂書店,2019年)
  • 『鉱物 ―石への探究がもたらす文明と文化の発展―』石橋隆は監修と執筆(大阪大学出版会,2019)
  • 『史上最強カラー図解 プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』下林典正・石橋隆監修