鉱物についてもっと知りたい!というリクエストにお応えし、地球科学社会教育機構理事長である石橋隆先生に日本の宝石鉱物についてお話をお聞きする機会をいただきました!

いしばし先生に聞く「日本の宝石鉱物」

ヒスイ_新潟県糸魚川産

地球でこれまでに見つかっている鉱物は、5000種を超えています。その中で、宝石にされるのは100種ほどです。宝石に求められる条件は「美しい色や輝きがある」「かたくて変質にも強い」「産出する量が少なくて珍しいために価値がある」などで、これらを満たすものは多くはありません。現在、ジュエリーに使われている宝石は、その大半が海外で産するものです。日本産の宝石や宝石材は、ヒスイや真珠、サンゴがあげられる程度でしょうか。しかし、我国でも産出量が少ない、あるいは宝石質に至らないながらも、宝石にされるものと同じ種の鉱物は各地に産します。このコーナーでは、日本各地に産する“宝石鉱物”について紹介していきます。

ガーネット_栃木県久良沢鉱山産

私は、これまで博物館や大学の研究員として鉱物や化石などを研究してきました。博物館には石の標本が多数あり、観察することで様々な知識が得られます。しかし、標本は地球の大地のごく一部を切り取ったものに過ぎず、石についての理解をより深めるためには、その産地を訪ねて地質や産出状況を調べて情報を得ることも重要といえます。

宝石鉱物_岐阜県産

今後、私が宝石鉱物の産地を巡って得た標本資料や現地の様子などをレポートしていきます。紹介予定の宝石鉱物は、クォーツ(石英)、トパーズ、アクアマリン(緑柱石)、トルマリン(電気石)、ペリドット(カンラン石)、ガーネット(ザクロ石)など。

私がこれまでに研究で関わった宝石鉱物についても取り上げます。例として、ユークレースという宝石がありますが、珍しいベリリウムという元素を主成分に含み、世界的にも産地が限られます。日本では産出報告がありませんでしたが、2011年に岐阜県の福岡鉱山で初めて発見して鉱物の学会で報告しました。アクアマリン(緑柱石)と一緒に産し、0.2mmほどのとても小さい結晶ですが、その後も日本で他産地のない珍しい鉱物です。
また、現在は紫外線を当てると鮮やかに発光する北海道産のオパールを研究しており、発光の原因がオパールに取り込まれている新種の鉱物などであることを突き止めて学会で発表しました。新種の鉱物は「北海道石」と命名され、2023年に1月に国際鉱物学連合の新種を認定する委員会に承認されました。

知識や理解が深まることによって、皆様の宝石の楽しみ方がより多様に、さらに一層増すことを願って、石たちについて語らせていただきます。

石橋 隆

一般社団法人地球科学教育機構 理事長。
1977年長野県松本市生まれ。
京都にある石の博物館、益富地学会館の理事・主任研究員や大阪大学総合学術博物館の研究員を経て、2024年より現職。地球科学の普及や研究家への支援活動に従事するほか、鉱物や地質の研究を行う。
著書に『プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』(ナツメ社)、監修に『世界を魅了する美しい宝石図鑑』(創元社)などがある。

石橋先生の書籍情報

  • 『宝石図鑑』キャリー・ホール著, 石橋隆監修(創元社,2023年)
  • 『日本の国石「ひすい」―バラエティーに富んだ鉱物の国』日本鉱物科学会, 石橋隆分担執筆(成山堂書店,2019年)
  • 『鉱物 ―石への探究がもたらす文明と文化の発展―』石橋隆は監修と執筆(大阪大学出版会,2019)
  • 『史上最強カラー図解 プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』下林典正・石橋隆監修