宝石を扱う者において、なくてはならない道具の一つに挙げられるのが、ルーペ。
ルーペといっても、子供の時に使っていた虫眼鏡とはちょっと形がちがう。
ここに来てくれる方なら、ルーペの形、知ってますよね。
そう、我がdifferencee(ディファレンシー)のアイコンがルーペなんです!
今回は宝石業界の七つ道具「ルーペ」の凄さ、語っちゃう。
その① レンズが凄い!
虫眼鏡を覗いた時、端っこが歪んで見えた事ありますよね。これは「球面収差」と呼ばれる現象です。
そして虫眼鏡で文字を見た時、これまた端っこにぼやけた黄色が見えたことはないですか?こちらは「色収差」という現象。
宝石を観察する時に、「球面収差」や「色収差」があっては非常に困る!
宝石鑑別用のものは、これらが発生しないように補正したレンズ(トリプレット)になっています。
その② 倍率が凄い!
虫眼鏡の倍率は3.5倍。一方鑑別用ルーペは10倍が一般的。 GIA(米国宝石学会)でのダイアモンドのクラリティ基準も10倍ルーペが基本となっています。
内部や表面を更に拡大して見ることが出来る高倍率のものもありますが、倍率が高い方がいいとは一概には言えません。なぜなら、勿論内部は大きく見えますが、一度に観察できる範囲(視界深度)が狭まりますし、暗くなってしまう難点も。なので10倍のルーペの方が良いかもしれません。
10倍レンズの場合、対象物と2.5 cmの距離で焦点が合います。
なぜこの距離なのかというと、成人(近視や老眼ではない健康な青年期)は、手作業をする際に、眼と対象物の距離が25cm離れているのが、最も作業がやり易いという研究結果に基づいたものです。
その③ 光のあて方が凄い!
ルーペで宝石を見るとき、重要なのが光のあて方。内部をよく見るため、石の側面から光をあてた方がいいです。
シトリンなど屈折率が相対的に低い宝石を観察する際には、それほど気にする必要はありません。
しかし屈折率の高い石、(ダイアモンドやジルコンなど)ですと、光を真上から当ててしまうともう大変。宝石が輝いてしまって、内部が見え難くなってしまうからです。
コツとしては、光の入射角を微妙に変えながら観察する事。
ピンセットで持った石を、ピンセットの長さや向きを数ミリ単位で回転させたり、あるいは、注意しながら腰を曲げ(この時腰から上は動かさない)、上半身をゆっくり上下に揺すって、光の入射角を変化させます。
番外編・変わり種ルーペ、暗視野照明付き
暗視野照明とは……石の側面から照射し、内部を見やすくするため考案された照明法。
宝石用顕微鏡に備わっています。
そして暗視野照明付きルーペとは、ペンライト型。これは野外でも宝石を観察できるように開発されたものです。
ちょっとおしゃれに見えてたルーペですが、機能としては超優秀!
いつか機会があったら、覗いてみたいですね!