ディファレンシーのお客様であるブライオニー・リチャーズ博士が、ペイナイト(Painite)についての記事を20263月に公開されていましたので、ご紹介させていただきます。鉱物を研究する科学者ならではの視点で書かれた、ユニークで楽しめる記事です。

Dr. Bryony Richards


ブライオニー・リチャーズ博士


地球科学者/ユタ大学 エネルギー・地球科学研究所(EGI)シニア研究科学者

英国生まれ。ダラム大学で地質科学の学士号(最優等)を取得後、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校で博士号を取得。専門は岩石学・地球化学・熱年代学で、東ゴンドワナ大陸縁辺部の地質進化を研究してきました。
現在はユタ大学の研究機関EGIに所属し、衛星画像からナノスケール解析まで幅広い研究を行っています。南アフリカでのキンバーライト研究、ナミビアでの銅鉱山調査など、4大陸にわたるフィールドワークの経験を持ち、鉱物探査向けの独自ツール開発も手がけています。
研究室の外では、ユタ州の山中に小さな天文台(Cove Observatory)を構え、夜空の写真を撮り続けています。地球の石を調べる昼と、宇宙を眺める夜。どちらにも「まだ誰も気づいていないものを見つける」という同じ視点が流れているように感じます。
女性が天体写真・天文学に参加しやすい環境づくりにも取り組んでおり、EGIニュースレター「ASK EGI」では定期的にコラムを寄稿されています。

世界で、2つだけだった石

1950年代。英国の宝石学者アーサー・CD・ペイン氏が、ミャンマーの宝石産地「モゴク」を歩いていたとき、当時のどの図鑑にも載っていない赤褐色の結晶を拾い上げました。正式に新種と認定されるまで数年かかり、1957年、発見者の名をとって「ペイナイト(Painite)」と命名されました。

命名から約50年間、確認された標本はたったの2つ。2001年になってようやく数十個に増え、2000年代初頭に新たな鉱床が発見されて初めて、入手できる可能性のある石になりました。それまでは1カラットあたり最大60,000ドル——宝石としての美しさではなく、ただ「存在すること」に値段がついていた石です。

ペイナイトってどんな石?

出典:Bryony Richards, Ph.D. / Energy & Geoscience Institute (EGI)
化学組成CaZrAl₉O₁₅(BO₃)
カルシウム、ジルコニウム、アルミニウムを含む鉱物
硬度モース硬度約8
暗い赤褐色からほぼ黒

化学組成はCaZrAlO₁₅(BO)。カルシウム、ジルコニウム、アルミニウムを含む鉱物で、硬度はモース硬度約8。多くの宝石を上回る硬さを持ちながら、色は暗い赤褐色からほぼ黒。偏光下での縞模様構造は研究者を惹きつけますが、見た目の地味さは否めません。

生成のメカニズムはいまだ完全には解明されていません。ジルコニウムとアルミニウムを多く含む変成岩に、ホウ素を含む熱水流体が浸透するという、非常に限られた条件が重なったときにのみ結晶化すると考えられています。

モゴク地方はルビー・スピネル・サファイアが生まれる場所として世界的に知られています。その土地に、50年間気づかれないまま2つだけ存在していた石があった。「希少」とは、発見されるまで存在しないのかもしれません。堀石やアマテラス石の話と、どこか重なります。

元記事はこちら


リチャーズ博士の原文には、科学的な正確さとユーモアが自然に混ざり合っています。ぜひあわせてお読みください。

ASK EGI: No Painite, No Gain | EGI

EGI is a University of Utah research institute specializing in sustainable energy and mineral production.