バイキングが選んだ「究極のミニマリズム」

前回は、言葉の響きを守るために文字数を増やしたアングロサクソンの情熱についてお話ししました。 今回ご紹介するのは、それとは正反対の進化を遂げた「スカンジナビア・ルーン(ヤンガー・フサルク)」です。

驚くべきことに、彼らは基本の24文字から、なんと16文字にまで文字数を減らしてしまいました。覚えることは少なくなりましたが、その分、ひとつの文字にいくつもの役割を持たせるという、かなり大胆な改革を行ったようです。🪓

ささやき
スタッフ

文字の断捨離ですね✍

荒波を駆ける男たちの「現場主義」

8世紀頃から、北欧のバイキングたちは活動範囲を広げ、各地でその名を轟かせていました。そんな彼らにとって、文字は「机に向かって静かに書くもの」ではなく、遠征先で石碑(ルーン石碑)に刻んだり、持ち物に名を記したりするための「実用的な道具」だったようです。

硬い石に複雑な文字を何十文字も刻むのは、想像以上に重労働です。 「もっと手っ取り早く、効率よく刻めないか?」 そんな現場の声が聞こえてきそうなほど、彼らの選んだ16文字はシンプルで、無駄が削ぎ落とされています。

「兼任」が生んだミステリアスな読解

文字数を減らすということは、当然、ひとつの文字が担当する音が増えることを意味します。 例えば、現代の感覚でいえば「B」という文字で「B」も「P」も表してしまうようなイメージです。

読む側からすれば、「これはどっちの音で読めばいいんだ?」と迷ってしまいそうですが、当時の彼らにとっては「文脈でわかるから大丈夫だろう!」という、なんとも潔いスタンスだったようです。

この「余白の多さ」こそが、スカンジナビア・ルーンの面白さ。厳格なルールよりも、その場の勢いや伝わりやすさを優先した、バイキングたちらしい合理主義が透けて見えます。

削ぎ落としたからこそ、残った強さ

出典:Wikimedia Commons
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文字数を絞り込んだヤンガー・フサルクは、結果としてバイキング時代に爆発的に広まりました。今でも北欧の各地に多くのルーン石碑が残っているのは、この「書きやすさ(刻みやすさ)」があったからこそかもしれません。

洗練された美しさよりも、生き抜くための機能性。 彼らがルーン文字に求めたのは、飾らない「強さ」だったのではないでしょうか。