
鉱物の図鑑を開くと、確かにそこに名前がある....けれど、世界中の誰もその実物を手にすることができない……。
そんなまるで伝説のような時間を約90年ものあいだ過ごした石が、「ジェレメジェバイト(エレメエバイト)」です✨

スタッフ
名前があるのに誰も見たことがないなんてミステリアス✨️
📖 最初の90年:名前だけが図鑑に残された理由

物語の始まりは1883年。フランスの鉱物学者ダモールが、ロシア・シベリアの山中で採取されたごく小さな結晶を論文に記録しました。名前はロシアの鉱物学者パーヴェル・ジェレメジェフ氏にちなんで名付けられました。
成分はアルミニウムとホウ素からなる鉱物(ホウ酸塩鉱物)。 硬度は6.5〜7.5と、宝石として磨き上げてリングなどに留めるのにも十分な硬さを持っています。
それなのに、なぜ宝石にならなかったのか。 理由はシンプルで、「カットできる大きさの結晶が、地球上のどこを探しても見つからなかったから」です。採れるのは顕微鏡で覗くようなごく微小な粒ばかりで、宝石として研磨することすら叶いませんでした。
🌊 ナミビアの海岸線で起きた、偶然の出会い
名前の誕生から実に90年が過ぎた1973年。遠く離れたアフリカ・ナミビアの海岸近くで、事態は一変します🚗💨
道路工事の重機が砂を掘り返していたところ、作業員の妻がキラリと光る青い結晶を拾い上げました。 その美しい水色から、最初は誰もが「きっとアクアマリンだろう」と思い込んでいたそうです👀
ところが鉱物商を経て詳しく分析してみると、なんとあの90年間だれもカットサイズを見つけられなかった「ジェレメジェバイト」であることが判明しました!
ここで初めて、宝石に磨き上げられる透明で美しい結晶がまとまって世に出ることになります。2001年には同じナミビアのエロンゴ山地でも美しい結晶が見つかり、コレクターたちの憧れの的となりました。

所在地:ナミビア、エロンゴ州、スワコプムント地区、アランディス(mindat.org の所在地)サイズ:2.7 x 2.1 x 2.1 cm。1.4cmのジェレメジェバイト結晶の美しい断片。卓越した光沢と優れた色合いを誇ります。花崗岩、チャート、そして微量のハイアライトオパールからなる母岩に埋め込まれています。部分的な結晶ではありますが、紛れもなく宝石であり、ジェレメジェバイトそのもので、非常に美しい標本です。母岩付きのものは非常に希少です。例:チャーリー・キー。

スタッフ
透き通っていてとても綺麗✨️深い色のアクアマリンのように見えますね✨️
🌏 いまも変わらない「極上のレアストーン」
その後、ロシアやタジキスタン、マダガスカルなどでも産出が確認されました。
産地こそ世界各地に広がったものの、透明度が高く宝石として磨ける原石は今なおごくわずか。加熱などの人工的な処理をされることもほとんどなく、市場で見かける機会は極めて限られています💎
同じ超希少石である「グランディディエライト」が、発見から100年以上も宝石質のものに出会えなかった歴史とどこか重なりますね。

スタッフ
アクアマリンだと思って拾った石が、90年前に名前だけが付けられて眠っていた幻の石だった。
以前コラムでご紹介した、世界一希少と呼ばれた「ペイナイト」がそもそも存在そのものを知られていなかった石なら、ジェレメジェバイトは「名前だけが先にあって、ずっと本体が見つからなかった石」です。
何十年も人間を焦らし続けた末に、工事現場の砂の中からひょっこり顔を出す。鉱物が私たちと出会うタイミングには、いつも不思議な巡り合わせを感じます🌱
📚 参考資料
- Damour (1883)
- GIA / International Gem Society (IGS)
- The Mineralogical Record(Jeremejevite from Namibia, 2002)






