宝石の種類によってはマイナスポイントとなるインクルージョンですが、見方を変えれば魅力的な個性となります。今回は液体を閉じ込めたインクルージョン、紹介します。

液体インクルージョン

液体インクルージョンとは、宝石の内部に液体が内包されている物を指します。
液体インクルージョンは固体のインクルージョンのように初めからあるものではありません。
液体インクルージョンの生成は大きく二つに分けられます。

まずひとつは 母岩となる宝石の結晶が作られている間に、結晶の空間に残存した液体が生成の過程にある結晶の面に付着したまま取り込まれたものです。その内包された液体は、時には他の成分の溶液だったり、内包された気体が後に液化して、液体インクルージョンは生成されます。
その場合、母岩となる宝石の結晶の構造に支配されます。平面的な分布になり、母岩となる結晶(宝石)の、形成される軸の方向に平行するような形になります。

ふたつめは、母体となる宝石の結晶内部にて、不規則な状態で無数に広がる水滴のような形で表れます。この場合は、母岩となる宝石の形成される結晶の向きとは無関係な形となります。
ふたつめの不規則な広がりを見せる液体インクルージョンは、鳥の羽のように見えるということから、総称して「フェザー・インクルージョン」と呼ばれたりします。

そして更により特徴をつかんだ表現方法として、以下の呼び名があります。
メッシュ (網目) 状
フィンガー・プリント (指紋) 状
翅 (昆虫の羽根) 状
ウィスプ(煙草の煙) 状
ベール状(薄布状)

一般的な液体インクルージョンの他に、変化した形態として「ネガティブ・クリスタル」異なる液体インクルージョン「二相インクルージョン」「三相インクルージョン」「チューブ・インクルージョン」「液膜インクルージョン」があります。

液体インクルージョンは加熱処理を行うとインクルージョン内の液体は消滅してしまうため、液体インクルージョンが確認できるということは、未処理の天然宝石の証でもあります。

液体インクルージョンの例「オイルインクォーツ」

その名の通りクォーツの内部にオイルが入った石です。
オイルの正体は、石油。石油産出国で主に採れます。
オイルの量は石によりさまざまで、目には見えないほど微量な時もあります。そんな時はブラックライトを石に当てることで、オイルがブルーに光り(蛍光性)確認できます。

フィンガープリントインクルージョン

「フィンガープリントインクルージョン」とは、鉱物の内部に含まれた不純物がまるで指紋のように見えることから名付けられたインクルージョンの一種です。
フィンガープリントインクルージョンが見られる鉱物は限られていて、スリランカ産コランダム(サファイア)に現れます。
このフィンガープリントインクリュージョン(指紋状の結晶)の正体は、液体です。
変成岩特有(※)の内包物となり、フィンガープリントインクルージョンが確認されたコランダムはスリランカ産の鉱物と確定できます。

変成岩とは……すでに存在する岩石が熱や圧力を受けても融解せずに再結晶してできた岩石のこと。地球のプレート運動によって地下深くまで運ばれて圧力を受けたり、マグマの高温に接触することで生じる。ルビー・サファイア・エメラルドなどが変成岩から見つかる。

人類が誕生するよりずっと昔の液体が閉じ込められてる液体インクルージョン。
なんだかとってもロマンティックですね!